神奈川県まで足を伸ばして。
246号線からちょっと入ったところ。小山町よりなので意外と近い秘境。神奈川県は足柄上郡山北町にある、その名はユーシン渓谷。絶景と名高いこの場所は、丹沢大山国定公園を構成しており、ハイカーたちで密かに賑わうスポット。携帯電話は圏外になるため、お出かけ前にはちゃんとお家の人に目的地と予定の帰宅時間を伝えておきましょう。
丹沢湖を左手に見てクルマを飛ばします。丹沢の景色だけですでにテンションはあがります。バスで来る人は丹沢湖沿いにある玄倉商店とその付近にあるバス停で下車。クルマで行く人はもうちょっと先まで登れるものの、舗装道とはいえあまり整備されていないので、車高の低いクルマは避けたほうがよいかもしれません。
さて、自身の体力のなさも考慮して今回はクルマで出来るだけ近くまでアクセスしてみましょう。クルマが入れる場所の最奥であるゲートの近くにある駐車スペースはオフシーズンというのにそこそこの混雑具合。ここからはゲートの脇を抜けて歩くのみ。何をもってゴールとするかは人それぞれではありますが、ユーシンロッジという休憩スポット(現在は休業中)を目的地とするのがスタンダードのようです。
目的地までほぼ一本道。序盤は道も歩きやすく、景色を眺めながらただただ歩きます。装備はそれなりにしていったほうがよさそう。トレイルランシューズ程度ではなかなかしんどかったです。途中ですれ違うハイカーたちはリア充カップルやシニアのご夫婦。単独歩行をするおっさんや、チャリンカーなどさまざま。見かけたなかで一番最年少は小学校低学年くらいの自転車ボーイでした。がんばれ少年!
新緑のころや紅葉時はすごくきれいなんだろなーとつぶやきながら歩くこと数十分。ほどなくトンネルが現れ、じょじょに山奥感を増していきます。渓谷を流れる玄倉川は眼下を流れ、右手の山からはちょいちょいがけ崩れをしてるんだろーなと思われる形跡が見て取れ、治山や治水のためにそこかしこに工事の形跡があったりもします。景色がいいとはいえ自然相手であることと、痛ましい水難事故があったという場所であるということもどうぞお忘れなく。
もりもり歩いて、ユーシンハイクのポイントのひとつ。青崩隧道(あおざれずいどう)。もとい、新・青崩隧道。ネーミングからして期待と不安を駆り立ててくれます。いざ突入してみますが、トンネルは途中でぐぐっとカーブしており、照明のたぐいは一切ないため両側からの光が入らないところまでくると懐中電灯やヘッドライトなどがないと見えません。冗談抜きに見えません。試しに電気を消してみると方向感覚がわからなくなり、まっくら。自分の手なんかも見えなくなり不思議な感覚。そこそこの長さをもつトンネルを歩き、光が見えた時の感覚もまた不思議。生半可じゃないまっくらを体験してみましょう。
(マジでまっくら。画像の表示エラーではございません)
さらに歩みをすすめ、みっつめのトンネル、これまた素敵なネーミングの石崩隧道。青崩隧道よりもどストレートな名前。ここを抜けると、ユーシン渓谷の最大の山場がすぐそこに。
はい。でました!水力発電用の玄倉ダムの貯水が、あまりの透明度によってコバルトブルー、エメラルドグリーン、群青、ヴィリジアン、いやユーシンブルーに透き通る水がたくわえられています。水深はおよそ5メートルから10メートルくらいといったところでしょうか。どこまでも吸い込まれそうなその青さと、スケールの大きさ。見とれるあまり時間が経つのをしばし忘れがちになります。高所恐怖症というワケでもありませんが、広大な風景のなかに透明の水と川底が見下ろせることによって足がすくんでみたり。しばらく続くこのユーシンブルーとともにハイキングの足をすすめましょう(ここまでゲートからおよそ50-60分程度。なお、取り急ぎの目的地であるユーシンロッジまでは、あと半分くらい。ちびっこやあくまでユーシンブルーを目的にしていた方などはここで引き返してもよいかもしれません)。
その後も歩みを進めると渓谷は深みを増していき、川にある岩もサイズがかなり大きくなってきます。隧道も素掘りで、頭上からはしずくが落ちてきたり。なお、このしずくによってできた水たまりまで透明度が高いから面白い。右手の山肌から流れ落ちる水も、林道をかまわず横断していたり舗装もガタついてきたりします。相変わらず川を流れ落ちる渓流の水音や岩肌を眺めながら登って行きましょう。
景色を眺めながら、またはモノ思いにふけりながら、それとも何も考えずに自然を取り込みながらそこそこ歩くと、目的地まであとちょっと。ぐぐっとカーブして眼下に流れていた玄倉川の流れを渡るとそこがかつての宿泊施設、ユーシンロッジに到着します。多くのハイカーがロッジ前のステージのような広場のようなスペースでランチやコーヒーブレイクなど各々にハイクの疲れを癒やしています。
こちらユーシンロッジ。現在では館内に入ることはできませんが、登山者たちの緊急の避難先として一部の部屋が開放されており、炊事エリアなども完備していたり寝具もあるなど非常時の退避場所としてはなかなかの快適性。旅のノートにもいろいろなことが書かれており、多様な人たちがユーシンハイクを満喫している様子が伺えます。
さて、山カップルに頼まれシャッターを押してあげたり、周囲をなんとなく散策した後は、同じく来た道を戻って帰路につきます。同じ道であるにも関わらず、なんとなく往路とは違う感覚で景色を楽しむことができたり。後ろから追い抜いてくるチャリンカーの皆さまは下りということもあってオフロードとはいえ颯爽と駆け抜けていきます。小鳥のさえずりが聴こえてきたり、山の花が咲いていたり、カメラなんかも持って行くと撮影もはかどりそうです。
帰り道も同じく2時間ちょっと。復路で出逢うユーシンブルーには相変わらず溜息がでるものの、なんとなく顔なじみになった気分さえしてきます。まっくらな新・青崩隧道も登りのときよりもなんだか短く感じて寂しい思いをしたり。駐車場スペースに戻るころには適度な疲労で、ヘトヘトになるような感じはありません。家に帰るまでが遠足です。気分はリラックスできるものの、体力的にはやはり心配なところもあるので帰り道の運転などにも十分にご注意を。
夕景の丹沢湖もなかなかのフォトジェニック。近くにある絶景をどうぞ堪能してくださいませ。